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法律とハラスメント。その③

前回の続きです。

『法律とハラスメント。その③』と題し、同テーマの最終回といたします。

 

同テーマの初回から前回までは以下をお読みください。

初回:『法律とハラスメント。その①』

前回:『法律とハラスメント。その②』

 

前回はハラスメントに対する怒りや贖罪について綴りましたが、

今回の投稿内容のキーワードは「鎮魂」です。

 

 

「鎮魂」=「魂」を鎮めること。

人の魂を鎮める、霊を慰める(慰霊)という意味合いの言葉。

 

「鎮魂」は元々神道の言葉とあって、

今でも長き歴史のある神社では、

鎮魂を目的とした「御霊祭り」や「慰霊祭」といった鎮魂祭が行われています。

 

有名なところでは、

国の戦没者を祀った靖国神社で毎年行われる「御霊祭り」など。

 

そのような靖国神社レベルの大きな儀式を行わなくても、

個人の意識レベルで人の魂が鎮まるようにと

心の中で祈ることも鎮魂の儀式であると思います。

 

私は、ハラスメント防止に関わる仕事を

数多く担当するようになってから、

個人的に心の中で「鎮魂」を行う機会が増していきました。

 

それは、ハラスメント事件の報道や判例を調べるたびに、

ハラスメントによって失われた命が多いことを知ったからです。

 

たぶん、ハラスメント防止対策に関わっていなければ、

日常の事件の一つとしてさらっと読んでおくだけで、

事の細かな経緯までは知ることもなかったであろうと思います。

 

最も衝撃を受けたのは、

2015年頃、

ハラスメントを被ったことによって(+過重労働)、

自死を選んだ某大手広告代理店の女性社員Aさんの事件。

 

各メディアで盛んに報道されたこともあり、

ハラスメント防止業務等に関わっていなくても、

大半の人の記憶には残っているようですね。

 

私はAさんとの面識はありませんが、

経緯を調べるとわかってくるのは、

Aさんは一生懸命勉強をして、

競争率の高い企業に就職された方。

 

まだ20代半ば。

未来へと進まれるはずであった貴重な命でした。

  

Aさんは心身が疲弊しすぎて、

ポキッと心が折れてしまわれたのかもしれません。

 

それでも、

命を終える選択ではなく、

休息を選んでほしかったと思います。

 

休息によって、

会社を辞めることになったとしても、

辞めるまでもなく企業戦士から脱落したとしても。

 

Aさんのような努力家は、

他の企業からも必要とされる人材です。

 

耐えられないほどに苦しい環境ならば、

一度レールから外れて休息し、

新たな環境で人生を歩んでいただきたかった。

 

今、赤の他人の私がそんなことを思って悔しがっていても、

何の生産性はありませんが。

 

それでも、

Aさんのことを風化させたくない、

そして同じようなことが繰り返されないことを願う私は、

ハラスメントは人の命を奪ってしまう可能性もある行為だということを

伝え続けようと自分の心に誓っています。

 

Aさんだけではなく、企業、官公庁、様々な組織の従業員が、

ハラスメント被害を苦にして自らの命を閉じてしまう事件が日々報道されています。

 

加害者とされる当事者は「そんなつもりはなかった…」と

無自覚なことも少なくなくありませんが、

最悪の事態が生じてからそんなことをいっても、

時すでに遅し。

 

加害者自身も大きなダメージと

社会的制裁を受けることになります。

もちろん、加害者が所属する組織も同様。

 

 

ところで、

無自覚な人とはどういう状態なのか。

 

特別な天然さんということでもなく、

殆どがごくごく平均的な思考の持ち主です。

 

例えば、以下の「 」のようなことを

思ったり、言ったりしている方は、

無自覚ゾーンに入る可能性が高いのでご注意を。 

 

・「ハラスメントくらいで思いつめるなって」

 

⇒その人が思いつめてしまうレベルのことをされたんです。

 

 

・「ハラスメントされて自害するなんて弱すぎるよね」

 

⇒それほど心をボロボロに傷つけられる環境で力尽きてしまったんです。

 

 

・「ハラスメントなんて、コミュニケーションとってれば大丈夫だよね」

 

⇒あなただけが大丈夫と思ってるだけだとしたら?

 

 

このような自問自答スイッチを、

働く人々が常に持っておくことで、

無自覚での行為はかなり防げると思います。

 

ハラスメント自覚ありの加害行為者はもちろん、

無自覚の加害行為がゼロになる時代が

早く早く訪れますように。

 

  

生じてしまった事実を知ること、

事実における善悪を明示すること、

発生と再発の防止策を伝えること、

旧時代の思考を切り替える必要性を説いていくこと、

 

そして、

召された命へ「鎮魂」の祈りを捧げ続けていく。

 

これが、ハラスメント防止に関わる仕事を担うことになった

私の役割なのだろうと日々感じています。

 

 

今回も最後までお読みいただき、

 

ありがとうございました!