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法律とハラスメント。その②

前回の『法律とハラスメント。その①』に続き、

今回も同テーマ『法律とハラスメント②』として綴ってまいります。

 

前回の終わりに綴ったのは、以下の通り。

 

―――――――――――――

「私の記憶の根底にある3つのことが支えとなって、

自力再起動⇒「わし、やらなあかんぜよ」モード・スイッチオンと相成る日々。

 

1.かつてハラスメントを受けてきた者としての怒り

2.過去にハラスメントをしてしまったであろう者としての贖罪

3.ハラスメントによって失われた命への鎮魂

 

1と2は私自身のことですが、

3は私以外の失われた尊い命のことです。」

――――――――――――

 

というわけで、

ややナーバス(緊張感という意味合いで)なジャンルの

ハラスメント防止教育の依頼を受ける際には、

1.2.3.に述べたことが私の意識の土台にあるからこそ、

「うし、やったる」と己に起動スイッチが入ります。

 

意識の土台をキーワードにすると、

 

「怒り」

「贖罪」

「鎮魂」

 

この3つのことは、私の記憶に深く深く存在しています。

 

ひとつめの「怒り」は、

今では100%ハラスメント行為に該当する「嫌がらせ・いじめ・侮蔑」を

私自身が被っていたことから生じた感情です。

 

「今では…」をつけたのは、

私自身が毎日のようにそれらの行為を受けていた頃は、

ハラスメント防止という概念が、

日本にまだ浸透していなかった時代ということから。

 

男女雇用機会均等法は施行されていましたが、

今の時代ではNGとするハラスメント行為をされても、

当時はギリギリまで我慢していました。

 

まずは、社会人デビューからの

パワーハラスメント記憶を呼び起こしてみると。

 

上司や先輩から物を投げつけられたり(つまりマトにされていた)

動作時に逐一暴言罵声を浴びていたり、

挨拶や質問をガン無視されたり、

会議で発表すると第一声で「なんだその声、肉食えよ!」とダメ出しエブリデイ。

 

 

肉って…ざっくり指導する人の言語って意味わかりません。

 

また、根も葉もないネガティヴな作り話をあちこち噂に流されたり、

あれもこれも、ああキリがない…

 

 

それでも我慢していました。

そうしなければ仕事を続けていけなかったからです。

 

ある日、

要求される仕事はできているにも関わらず、

ごく当たり前の行動中にもガンガン怒鳴られた時、

さすがにおかしいだろっと思った私は、

上司に向かって次のように言いました。

 

「なぜ私をそんなに怒鳴るんですか?

今日、私はミステイクしてません。

今の動きも何一つ間違えてません。

必要な叱責は受け止めます。

そうではないところでバカアホ!とか、

どんくせーとか、怒鳴るのはやめてください!」と。

 

 

上司は予期せぬ反撃にあったからなのでしょうか、

鳩が豆鉄砲くらった目&真っ赤な赤鬼顔で息も荒くなり、

私にこう言いました。

 

「オマエは新人だから、

怒鳴られるのもオマエの仕事だ。

オマエを怒鳴ることで周りの空気が締まるんだ。

だからこれからも俺はオマエを叱り続ける!

この業界はそうやってみんな育っていくんだ。

それが嫌なら、仕事なんて辞めてとっとと嫁にでも行ってしまえ!」。

 

これも意味わからん業界論指導…

 

おそらく、今こんなことを言ったらば、

その上司は首根っこつかまれて

コンプライアンス室へ連れていかれるとは思いますが、

当時はこのようなことは特別ではなく、

新人にとっての洗礼のごとく、

“罵倒はあたりまえ”としてまかり通っていました。

 

そのほか、セクシュアルハラスメントにいたっては、

もうもうもうもう、

アタシ10万字書けますわよ、書きましょうかね、ホホホ。

と記憶の蓋を開けたならば、

脳内アドレナリンが止まらん、でございます。

 

 

若いころならまだしも、年を重ねてからは、

セクハラ被害を訴えることはかなり躊躇します。

同じような相談を同世代から寄せられることも多くあります。

 

ベテラン世代であっても、みなさん我慢しています。

 

私も訴えにくい世代になってもハラスメントに悩んでいた頃、

「セクハラくらいで負けたくない、

仕事は絶対にやりぬいてみせる、絶対休まない」

と心に決めて、

パワハラ&セクハラをスルーし早朝出勤&残業を重ねていました。

 

そのうちに我慢が祟ってか、

毎日嘔吐するようになりました。

 

平日の睡眠時間は3時間~5時間はとれていましたが、

起床後5分も経つと、

喉から胃迄にカッチカチの鉄棒が

入れられたような感覚になって、

オエオエエ~と吐き気を催す⇒洗面所へ直行。

 

体重は2週間で5キロ減りました。

 

仕事に支障が出まくりで、

しかもこのまま私が倒れたら犬死にってやつか、、、

その前に訴訟で決着すべきか…

と考え始め、知人の弁護士に相談をもちかけておりました。

 

しかし、その後、

上司の謝罪と同僚の協力もあって諸々解決に向かい、

仕事への支障が無い環境になってからは、

嘔吐もぴたっと止まり、

食欲も戻ってあっという間に

5キロ増えてプラマイゼロに(ちょっと悲しい)。

 

心と身体はつながってるんだなと、この経験を通してつくづく実感しました。

 

その他、セクシュアルハラスメントの経験にいたっては、

このブログで10万字書くつもりはございませんが、

その10万字にもわたる内容はすべて怒りの記憶です。

 

行為者はとっくのとうに忘れているでしょうし、

そんな自覚もないと思います。

が、ハラスメントに限らず、

いじめ・嫌がらせ・侮辱などを受けたほうは、

しっかり覚えているものです。

 

お金の貸し借りと同じです。

2名の間に貸借関係があるとしたらば、

貸したほうは覚えてますが、

借りたほうはうっかりと忘れたりしませんか?

うっかり、ちゃっかり、意図的…な人もいるでしょうが。

 

100円程度なら貸した人も忘れますが、

5000円くらいからがボーダーラインかと。

 

私は覚えてますよ、5000円貸しているならば。

が、そんなこという私もランチタイムにお財布忘れてしまい、

同僚に1000円を借りたまま、

うっかり返し忘れてしまったことがあります。

 

翌日に「悪いんだけど、昨日のランチ代…」

と声をかけてくれた同僚は言いにくかったことでしょう。

申し訳ない…ごめんなさい。。。

 

で。

 

例えが「ランチ代借金忘れるハルカ」に飛んでしまいましたが、

人間の貸借に関する記憶の差と同様に、

ハラスメントに関わる記憶も加害者と被害者では大きな差があります。

 

記憶レベル10点中、

ゼロ(加害者)⇔10(被害者)くらいじゃないかと。

つまり、加害者は忘れるし、そもそも自覚がなかったりするものです。

 

今の私は、転職で仕事の環境が変わり、

年を重ねたこともあって、

かつての自分へのハラスメント被害を根に持つほどの

「怒り継続中」ではありません。

 

当人のことも恨んでませんし、

当人へ残っている感情は、

残念な人だったなぁ…というレベルです。

 

但し、ハラスメント事実のあれこれは、

やはり許される行為ではありません。

 

今の時代でも、

私以外の人に同じようなハラスメント行為が

未だに起こっているという相談を受けると、

ハラワタがグツッグツッと再沸騰し始めます。

 

たっくさんのハラスメント経験をした分、

相談例には私自身が被ってきことに類似するケースも多いので、

被害者の怒り・悲しみ・苦しみが自分のことのように理解できます。

 

そして今の私はハラスメントにまみれた環境からは脱し、

かつハラスメントを解決してきた経験もあるので、

ハラワタをグツッグツッさせながらも、

脳内は冷静に問題解決のためのプロセスを指導していくことができます。

 

そう考えると、

今のハラスメント防止に関わる仕事は、

ハラスメント被害による「怒り」の経験があったからこそできるものです。

 

 

さて、

次にふたつめのキーワード「贖罪」について。

 

私は被害を受けただけではなく、

加害者になっていたこともあろうかと思っています。

 

それは、ハラスメントに耐えながら仕事を覚えていき、

独り立ちできた人には珍しくない現象です。

 

自分にできたことだから、

自分も耐えて強くなれたからと、

不要に厳しく後輩指導していた時期があったと思います。

 

法の下で訴えられてはいませんが、

「遥さんの言い方がきつくて落ち込みました」

「できないのは努力してないからっていわれて…もうムリです」・・・。

 

こんな苦情を、

アシスタントや後輩から寄せられたことはありました。

 

自分の言動を、

今のハラスメントガイドラインに照らし合わせてみると、

出てくる出てくる…

 

パワハラだけではなく、セクハラも。

 

セクハラは、卑猥、猥褻な内容ではなくても該当しますし、

また、同性間でもありますから。

 

「あなた、女としてどうなの?」

「おまえ、男としてどうなんだよ」

 

これ、リッパなセクハラ該当ワードです。

 

恥ずかしながら、私もかつては言っていました。

特に男性に言っていたかな…ごめんなさい。。

 

仕事上、NG例を知れば知るほど、

過去にあったであろう自分のハラスメント言動が恥ずかしくなります。

 

私がいくら反省したとしても、

言われた人にとっては腹ただしかったでしょうし、

憎まれてもしかたがないと思います。

 

だからこそ、私はかつての私の言動によって、

傷ついた人への「贖罪」の意識を持ち続けています。

 

この「贖罪」の意識も、

ハラスメント関連の仕事を進めるうえでは、

自分も人を傷つけたことがあるはずなので、

だからこそ、その償いとしてやりぬこうとする、

心の重しのようなものになっています。

 

そして、もうひとつのキーワードは、

「鎮魂」。

 

こちらについては、

次回に投稿します。

 

 

今回も最後までお読みいただき、

ありがとうございました!